2011年12月17日土曜日

佐須挽歌

佐須挽歌


虎捕り太鼓は躍動し

ダ、ダ、ダ、ダ、ダーン、ダーン、ダーン、ダーン

撥を持つ手に響くのは

この地に住む事受け止めて、精一杯生きている

毎日の、気持ちの響きを通わせてた


お姑さん見てください

若嫁たちはいきいきと、集まり稽古を重ねてた

手早く食事を済ませたら、後の始末はお願いし

出かけて行った精華です


衣装も揃えて新調し

髪を結い上げ、紅をさす

晴れやかな、お祭り盛り上げ、この村の

別嬪揃いが人を呼ぶ


娘たちにも伝えてく

撥を交わして、身を翻し後方に

退くようでも、目は追って、育ってきたのが嬉しくて

タ、タ、タ、タ、ターン、ターン、ターン、ターン

この地に住む事大切に、覚えていなさいこの響き


ああ、あの秋の日の講堂の屋根突き抜けて

響き渡った、虎捕り太鼓

飯舘の、佐須の集落農業祭


かぼちゃコンテストは皆外れ、猪の牙の愚痴話

生き物いるのも生業の、一こまになってる佐須の村

餅つき、蕎麦打ち、大振る舞い

豊かな実りを、褒め称え


何より、味噌蔵見てください

熟成菌が住みついて、胡桃の桶で寝かせてる

この地で採れた大豆です

確かな思いで作ってる、その味わいをいただいて


白狼は先導で、虎捕り山の山登り

山津見神社の横の道

奥の祠に参拝を、している道だと教えられ

一日限りの修験道


落ち葉の中に、見え隠れ

ムラサキシメジの時期でした

もう一週間でお祭りで、また、大勢が登ります

集落守るこの山の、守り神の言い伝え


神妙に聞いてはいますが、足元が

自分じゃしっかり登れると

鉄鎖も握りしめ、もっと身体を使わなきゃ

この梯子、長い間の信仰の続いているのを表して

先人も登っていたのを追いかける、そんな虎捕り山登り


吹き渡る風に四方を見遥かし

ここが、一番見どころで海の方まで望めます

岩から生えてる緑も見つけ、根が割る時を思い

ああ、あの秋の空、佐須の山


泊った宿の囲炉裏端

語り続けた村づくり、一夜の話は続きます

言い伝え、祭りがあって、人が来て

それが、営み、人の生


この世紀

白狼は、どこに居る

悪党退治の先導に、山に霊気を集めてる

福島の飯舘村の佐須の山

ああ、二〇一一年三月一一日



『山仕事讃歌』 マハラバ文庫 増田レア

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