2016年2月9日火曜日

火を灯し


 本日で、再入院から3か月なのにすでに敦加は、この世になく
先に旅立って、いつかまた私達と会える日が来るのでしょう

 悪性リンパ腫、EBウィルス関連血球貪食症候群、難病にも指定されていない未知の病に
苦しく辛い日々であったはずなのに、彼女は自分より他を気遣って
 遠い往復になる私を夜には、戻る事を承知して
どれほど心細かったのでしょう
 原因不明と言われるたびに、自己の揺らぎに陥っていたのではと思います
繰り返して襲う高熱に、身体は蝕まれ、意識は遊離していくのに
耐えていたのです

 まだ、仕事も覚えたて、これから社会が拡がるのに
遣りたかった夢に近づいてきたところで
30歳の一年は、うすうす病を感じ取って
31歳の祝いは僅か20日の退院でしかなく
こんなに若くて、可能性に満ちているのに
 悔しいと、口惜しがり、涙をこぼしていた枕に
気休めの、治ったらいろいろできるとしか言えなかった

入院は合わせれば9ヶ月
姉娘も家族とも、父親も兄も
どんどん進行していく容態に
ひたすら毎日の予定を変えていき
枕元に、声かけて
それでも運命は引き離してしまった

何処かのころからか、励ますよりも慰める言葉を探して
その酷さに、自分を騙しながら
いつかは治ってほしい
細くなっていく食事にもおののいて
僅かに含ませた水ですら
血の混じった痰となりむせこんで
真夜中の吸引を苦しがる、その娘を慰めて
呼吸を整え、息を伸ばし
子どもを産めない体になったけど、いつか身よりなき子のグラン・マに
文明の交雑する島で、財団でも作って多くの子供と暮らしたい
そんな夢を、語りました


いまわの際、綺麗な息をすっと止めて逝ったのです


その、子をなくした媼の老いさらぼえるぞ哀れなる  
彼女の夢を少しだけ、春の光彩の中、誰かに伝えていきたいと
一緒に旅する約束の南の島へと唱えます