文庫番が、母の記録を書いているという知らせに、出版の折には送料もかかるだろうから、使って欲しいと一冊のファイルが贈られてきて、お互いの供養になればと有難く思うのです。
あの、掘りごたつに温まりながら不自由な指先で一枚ずつの切手を整理していた姿。言葉が不自由であったけれども、鋭い感性と知性があって、そのもどかしさの中に、コレクションを続けていて、あれから40年は経つのでしょう。彼も亡くなり、そのご遺族さんからのお申し出。
もったいなくて、これらを使ってしまっていいのだろうかと思うけれど、母の記録というのは実は、一人の生き方ではなく、繋がっている大勢の人達の生きてきた証。
今回の本の中には、母の手紙や文章も多く入れてみました。そして父の手紙も。
あの頃を。文庫番も知らない月日を、母を、私たちを支えてくれていた大勢の人達。教えると言うのは実は教えられているのだと、父は言っていたのです。彼達の人生も断片として見えてくる本になっていれば、このお志しに報いたことになるのでしょう。
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