2020年8月9日日曜日

お味噌の息吹

 
  今年の味噌のできはどうなのだろうかと、桶を覗き込み、梅雨前の天地返しは功を奏して、黴の一つもないものです。本当に初めての木桶仕込み、自家栽培の大豆。ミートチョッパーで挽いた豆。そして滅多に手に入らない玄米糀。自分としては極上の若味噌になっています。秋になって本格的に食べ始めるのも期待できます。味見は今が爽やかな柔らかさのある新生姜で、夕餉の前の一皿になりました。
 そう、この味噌は長崎の海水の天日干し塩。この木桶は福島の麹屋さんの桶。それが山梨産の大豆を仕込んでいるのです。甲州の暑い夏は味噌の熟成は進みやすいので、悩ましいのですけれどこの滋養が育てるものを考えます。
 この仕様が準ずる味噌のプロジェクトは、秋月医師の二度と繰り返せない実証を下地に、少しでも免疫力を高め、新たな被災者であった飯舘村の人たちの味噌造りを絶やさないために続けているものでした。
 本日に何をなすべきなのか、何に抗い、何に賛同するのか。ただ味噌桶を覗き込み、そこに新たないのちの香しさを確かめるのです。あの松川の仮設住宅での収穫祭にもらった言葉、お味噌がお腹の中で生きている。そう飯舘村のお母さんのお一人は言ってくれました。それは、秋月医師の本を読んでいたとはわからない、純朴な一言でありながら、お味噌の可能性を教えてくれたのでした。
 だから、私は今年味噌を仕込むことができたのです。そして、8月9日にまた味噌の息吹を聴き取ったのです。生きたい!と。

 本日は91年前に文庫番の母が生まれた日でもあります。
 

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