暮に贈ってもらった新巻鮭は、その塩味だけでの三平汁をつくりました。冷凍してあった大根、芽の出そうなじゃが芋、おすすめの白菜。そして昆布。旨味と野菜の滋養と、ほろっと崩れるまで柔らかくなった粗。
その、素朴な取り合わせ、コトコト薪ストーブの上で煮込んでおけば、少し帰宅が遅くなっても安心です。酒粕や、味噌の味で食べるところもあるのかもしれませんが、私は母が拵えていた少し石油ストーブの匂いも懐かしい大鍋の味に近づきたいのです。
新巻鮭はしっかりと塩があったので、夫婦二人の私達には、加減が難しい。塩の足りない文庫番がピリッとしそうなものでした。
山の中で、何人もの口へ入ったのは、幾らでも増やすことのできる魔法の鍋だったのだとまた思います。アガペーそれは饗食。冬の山道を学校から戻ると、温もりのあった屋根の下。自分でスプーンを持てる者も、その口元へ入れてあげる者も、共に食べていたそういう味を、今の社会でも、誰でもが、満ち足りて眠りに着ける。そういう湯気の魔法が漂っていたように思います。
なんという贅沢に、私達二人では、このしっかりした塩味を何日で平らげるのでしょう。
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